弁護士が解説!実家の相続における失敗事例5選~注意点と対応

皆さん、こんにちは。蒼生(そうせい)法律事務所、代表弁護士の平野 潤(ひらの じゅん)です。

「相続」と聞くと、テレビドラマのような「莫大な遺産をめぐる争い」をイメージされるかもしれません。しかし、実際にご相談が多いのは、そうした華やかな(?)ケースばかりではありません。

特に多いのが、「実家の相続」に関するお悩みです。
ご自身が生まれ育った「実家」。そこには、たくさんの思い出が詰まっていることでしょう。しかし、いざ相続となると、その「実家」が悩みのタネになってしまうケースが非常に多いのです。

  • 自分はもう別の場所に家を買って住んでいる
  • 実家は田舎にあって、誰も住む予定がない
  • 実家以外にも、納屋や倉庫、使っていない農地があるらしい…

こうしたご実家を相続した結果、対策を誤ってしまい、大きなトラブルに発展してしまう。そんなご相談が後を絶ちません。

この記事では、弁護士の視点から、特に「実家の相続」でよくある失敗事例を5つピックアップし、その注意点と対応策について、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。


失敗事例1:「とりあえず放置」で固定資産税が6倍に!?「空き家」リスク

Aさんの父親が亡くなり、実家の土地と建物を相続しました。しかし、Aさん自身は家族と遠方の都会で暮らしており、実家に戻る予定はありません。 「特に売るのも面倒だし、思い出もあるから、とりあえずそのままにしておこう」

Aさんは、実家を空き家のまま放置することにしました。

失敗の結末

数年後、近隣住民から「家がボロボロで危険だ」「草木が伸び放題で迷惑している」「不法投棄のゴミがひどい」といった苦情が役所に入りました。

役所の調査の結果、Aさんの実家は「特定空家(とくていあきや)」に指定されてしまいました。
※「特定空家」とは、そのまま放置すると倒壊の危険があったり、衛生上・景観上で非常に問題があったりすると行政が判断した空き家のことです。

この「特定空家」に指定されると、非常に大きなペナルティがあります。
それは、「固定資産税(こていしさんぜい)の優遇措置が解除される」ことです。

土地の上に住宅が建っていると、「住宅用地の特例」によって固定資産税(毎年かかる不動産の税金)が最大で1/6に減額されています。しかし、「特定空家」に指定されると、この特例が適用されなくなり、固定資産税が実質的に最大6倍に跳ね上がってしまうのです。
Aさんは、住んでもいない実家のために、高額な固定資産税と、家の解体費用や管理費用(草刈りなど)という「負の遺産」を抱え込むことになってしまいました。

【出典】
• ページ名:「特定空家等」または「管理不全空家等」に該当すると土地に対する固定資産税・都市計画税の税額が高くなる場合があります。(東京都主税局)
• URL:https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/real_estate/kotei_tosi/tokuteiakiya


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失敗事例2:「とりあえず共有」で身動きが取れない!処分できない不動産

Bさん(長男)は、父親の相続にあたり、弟と妹と話し合いました。遺産は主に実家の不動産です。
「お父さんとの思い出の家だから、誰も住まないけど、売るのは忍びない」
「かといって、誰か一人が相続するのも不公平だ」

そこでBさんたちは、「ひとまず、兄弟3人の共有(きょうゆう)名義にしておこう」と決めました。
「共有」とは、一つの不動産を複数人の名義で所有することです。

失敗の結末

数年後、Bさんたちは「やはり管理も大変だし、固定資産税も払い続けるのがもったいない」と考え、直ぐにでも実家を売却したいと思うようになりました。

しかし、ここで問題が発生します。弟が「やっぱり売りたくない」と言い出したのです。

共有の不動産を売却(処分)する場合、共有者「全員」の同意が必要です。一人でも反対すれば、売ることはできません。

さらに、Bさん(長男)が「じゃあ、俺が管理費用を立て替えておくよ」と支払っていた固定資産税や火災保険料についても、「後で払う」と言ったまま弟や妹が支払ってくれず、金銭的なトラブルにも発展してしまいました。

「とりあえず共有」は、問題を先送りにしているだけで、多くの場合、将来もっと大きなトラブルを引き起こす原因になります。


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失敗事例3:共有状態のまま時が過ぎ…「二次相続」で相続人がネズミ算式に増加

Cさん(3人兄弟の長女)は、事例2と同様、実家を兄弟3人の共有名義にしていました。
その後、特に売却などの話もまとまらないまま、10年が経過しました。 そんな中、弟(次男)が亡くなってしまいました。

失敗の結末

Cさんが「今度こそ実家を売却しよう」と弟(三男)と話し合い、亡くなった次男の妻と子供たち(Cさんから見れば甥・姪)に連絡を取りました。

ここで発生するのが「二次相続(にじそうぞく)」です。
※「二次相続」とは、最初の相続(一次相続)で財産を引き継いだ人が亡くなり、その人の相続(二次相続)が発生することです。

亡くなった次男が持っていた実家の「共有持分(きょうゆうもちぶん)」(=実家を所有する権利)は、次男の妻と子供たちが相続することになります。

その結果、実家の共有者は、「Cさん(長女)」「三男」「次男の妻」「次男の子供2人」の合計5人に増えてしまいました。
Cさんや三男は実家を売りたいと思っていますが、甥や姪は「お父さんの思い出の家だから」と売却に反対。
事例2のように、売ることができなくなるかもしれません。

また、相続人が増えていくことで、一部の相続人と全く連絡が取れない、所在不明という事態に陥ることも考えられます。さらに、相続関係が複雑となるため、把握していなかった相続人が判明することもあり得ます。

相続人が増えれば増えるほど、関係性も薄くなり、意見をまとめるのは絶望的に難しくなります。
共有名義のまま放置することは、次の世代に「負の遺産」を押し付けることになりかねません。


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失敗事例4:実家しか見ていなかった!後から発覚した「多額の借金」

Dさんは、父親が亡くなり、相続手続を始めました。
Dさんは「財産は、今誰も住んでいない田舎の実家(土地・建物)くらいだろう」と思い込んでいました。
Dさんは、とりあえず実家の価値が下がらないよう、屋根の修繕を行ったり、庭の草むしりをしたりと「管理」を始めました。

失敗の結末

父親が亡くなってから4ヶ月が経った頃、Dさんの元に消費者金融から督促状が届きました。
なんと、父親にはDさんが全く知らなかった多額の借金(負債)があったのです。

「財産よりも借金の方が多いなら、相続なんてしたくなかった!」
Dさんは慌てて「相続放棄(そうぞくほうき)」をしようとしました。

※「相続放棄」とは、プラスの財産(不動産や預金など)もマイナスの財産(借金など)も一切引き継がない、と家庭裁判所に申述(もうしたて)することです。

これは原則として「相続の開始を知った時から3ヶ月以内」に行う必要があります。

Dさんは、すでに3ヶ月の期限を過ぎていました。 それだけではありません。Dさんは実家の修繕(管理)をしていました。相続財産を処分したり、管理したりする行為は、「自分は相続します」と認めた(=単純承認した)と見なされ、原則として相続放棄ができなくなってしまうのです。

Dさんは、価値があるかどうかもわからない実家と、多額の借金の両方を背負うことになってしまいました。
実家のことばかりに気を取られ、「相続財産調査(そうぞくざいさんちょうさ)」(亡くなった人のプラスの財産とマイナスの財産をすべて調べること)を怠ったことが、取り返しのつかない失敗につながったのです。

【出典】
• ページ名:相続の放棄の申述(裁判所)
• URL:https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html


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失敗事例5:「オレが親の面倒を見た!」寄与分・特別受益で話し合いが決裂

Eさん(長男)は、父親が亡くなり、妹と弟と実家の分け方について話し合いました
(これを「遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)」と言います)。
実家にはEさんが父親と同居していました。預貯金はあまり残っていません。

失敗の結末

Eさんは「自分がずっと一緒に住んで、親父の面倒を見てきたんだ。だから、実家は当然、自分がもらう」と主張しました。

すると、妹が「お兄ちゃんは、お父さんから家を建てる時に頭金(特別受益)を援助してもらってたじゃない!不公平よ!」と反論。

弟も「それに、お兄ちゃんが親父の面倒を見たと言っても、親父の年金で生活してた部分もあるだろ。それが寄与分(きよぶん)として認められるほどなの?」と応戦。

※「特別受益(とくべつじゅえき)」とは、一部の相続人だけが亡くなった人から生前に受け取っていた特別な利益(生計の資本となるような贈与など)のことです
※「寄与分(きよぶん)」とは、亡くなった人の財産の維持や増加に特別な貢献(介護や事業の手伝いなど)をした相続人が、その分多く相続できる制度です。

「実家」という分けにくい財産が中心であることに加え、「誰が親の面倒を見たか」「誰が多く援助してもらったか」といった過去の感情的な不満が噴出し、遺産分割協議は完全に決裂。

Eさんたちは、家庭裁判所での「遺産分割調停(いさんぶんかつちょうてい)」(裁判所の調停委員を介した話し合い)でも折り合いがつかず、最終的には「審判(しんぱん)」(裁判官が分け方を決める手続)に進むことになってしまいました。

感情的な対立は、相続を最も「争続」にしてしまう原因です。


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実家の相続で失敗しないために。弁護士ができること

ここまで、実家相続の恐ろしい失敗事例を見てきました。 こうした失敗を避け、円満な相続を実現するために、私たち弁護士がお手伝いできることはたくさんあります。

1.正確な「相続人調査」と「相続財産調査」
失敗事例4のように、「借金を見逃す」のは最悪のケースです。また、事例3のように「知らない相続人がいた」ということもあり得ます(亡くなった方の戸籍をすべて遡って調査します)。 弁護士は、専門的な知識で、不動産(実家、納屋、農地など)はもちろん、預貯金、有価証券、そして借金に至るまで、正確な財産調査を行い、相続の全体像を明らかにします。
2.公平で円満な「遺産分割協議」のサポート
失敗事例5のような感情的な対立は、当事者同士では解決が困難です。 弁護士が法的なアドバイザーとして、また冷静な第三者として間に入ることで、「寄与分」や「特別受益」、「遺言書がある場合の遺留分(いりゅうぶん)(※相続人に最低限保障される遺産の取り分)」などを法的に整理し、全員が納得できる分割案(例えば、実家を売却して現金で分ける「換価分割」や、誰か一人が相続し、他の相続人にお金を支払う「代償分割」など)を提案・調整します。
3.「空き家」や「共有不動産」の最適な処分方法のご提案
失敗事例1・2のような「負の遺産」にしないため、弁護士は司法書士や不動産業者とも連携し、売却、賃貸、あるいは「相続土地国庫帰属制度(※一定の要件を満たす土地を国に引き取ってもらう制度)」の活用など、ご実家の状況に応じた最適な出口戦略を一緒に考えます。
4.すべての手続の窓口となる「遺産整理業務」
「相続手続が複雑すぎて、何をしたらいいかわからない!」 「遠方に住んでいて、実家の片付けや役所の手続に行く時間がない」 そんな方のために、蒼生法律事務所では、相続財産の調査、遺産分割協議、不動産の名義変更、預貯金の解約・分配まで、あらゆる手続をワンストップで代行する「遺産整理業務」も承っております。

まとめ

「実家の相続」は、単なる財産の問題ではなく、ご家族の感情や、将来の管理責任が複雑に絡み合う難しい問題です。 「うちは仲が良いから大丈夫」「財産は実家だけだから揉めない」と思っていても、思わぬ落とし穴にはまってしまうことがあります。
もし、今まさに相続でお悩みの方、あるいは将来の相続にご不安を抱えている方(特に不動産オーナー様や会社経営者様)がいらっしゃいましたら、問題が複雑化する前に、ぜひ一度、私たち専門家にご相談ください。
蒼生法律事務所では、相続に関する初回のご相談を大切にしております。 あなたとご家族にとって、最善の解決策を一緒に見つけていきましょう。
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