年末年始は相続会議!~争族にならないために弁護士が教える秘訣~

皆さん、こんにちは。蒼生法律事務所の代表弁護士、平野 潤(ひらの じゅん)です。
早いもので今年も残りわずかとなりました。この年末年始のお正月休みは、ご実家に親族が一堂に集まる、年に一度の大切な機会となる方も多いのではないでしょうか。

賑やかなひとときを過ごす中で、ふと話題になるのが、高齢の親御さんのこと、そして将来の遺産相続のことかもしれません。しかし、「親が元気なうちに相続の話なんて縁起でもない」と、つい避けてしまいがちですよね。

実は、そこが「争族」(争う相続)への大きな落とし穴なんです!

私はこれまで多くの遺産相続関連案件(成年後見、相続人調査、相続財産調査、遺産分割、遺留分、遺言、寄与分、特別受益、空き家、相続税対策など)に携わってきましたが、残念ながら、相続をめぐる親族間のトラブルは年々増加傾向にあります。

このブログでは、皆さんがこの年末年始の貴重な機会を活かし、将来の争族を防ぐために話し合っておくべきこと、そして相続のプロである弁護士に相談するメリットについて、初心者の方にもわかりやすいように、親しみやすいトーンで解説していきます。


1. 【超重要】親が元気なうちに確認したい「親の今」と「財産の内容」

親の認知症と成年後見制度

高齢の親御さんと久しぶりに会って、「あれ? 最近、物忘れがひどいな…」と感じることはありませんか? 認知症のサインかもしれません。

親御さんが判断能力を失ってからでは、預金の解約や不動産の売却など、親御さんの財産に関する大切な手続きができなくなってしまいます。

そこで知っておいていただきたいのが「成年後見(せいねんこうけん)」制度です。

専門用語解説:成年後見制度
認知症や精神上の障害などにより、判断能力が不十分になった方を法律的に保護し、支援する制度です。財産管理や、医療・介護に関する契約締結などを成年後見人(弁護士などの専門家や親族)が行います。判断能力があるうちに任意後見契約を結んでおくこともできます。

「まさかうちの親が」と思わず、親御さんの現在の健康状態や財産管理の状況を確認し、もしもの時に備えて成年後見制度の利用を視野に入れることは、大切な相続税対策や空き家対策にもつながります。

【実際に合ったケース】

    • 高齢の親の認知症が進行し、施設入所を検討すべき段階で、将来の介護費用を確保するために、親所有の不動産を売却するところから、成年後見人に就任したケース
    • 知的障害を持つ子供のために、遺産分割協議を行う目的で、成年後見人に就任したケース

 

遺産の内容を把握する「相続財産調査」

相続が起きてから揉める原因の多くは、「遺産がどれくらいあるか」「どこにあるか」がわからず、親族間で不信感が生まれてしまうことにあります。

年末年始は、親御さんに遺産の内容を正直に教えてもらうチャンスです。

  • 預貯金(銀行名、支店名)、海外預金
  • 不動産(自宅、空き家、賃貸マンション、土地など)
  • 株や投資信託などの有価証券
  • 生命保険や負債(借金)
  • 暗号資産(仮想通貨)

特に、不動産オーナーや会社経営者の方の財産は、様々な投資資産や海外資産などをお持ちのケースもあり、複雑になりがちです。

可能であれば、通帳や権利証の保管場所、不動産の価値評価に役立つ資料などについても、家族全員で共有しておきましょう。

・「相続財産調査を始めたら、兄弟による使い込みが発覚した!」
・「親が誰かの連帯保証人になっていた…」

といったリスクや失敗を回避するためにも、事前の相続人調査・相続財産調査は非常に重要です。

【実際に合ったケース】

    • 親の介護を名目に、親名義の通帳などをすべて取り込んでしまった妹から、親の財産状況を一切教えてもらえず、相続発生後に、調査の結果、預貯金を発見し、使い込みを追及したケース

 


2. 「不公平感」が争族を生む!事前に話し合うべき論点

遺産分割の「不平等」を調整する仕組み

遺産分割協議で「長男だけが大学に行くまで援助を受けていた」「私だけずっと親の面倒を見てきたのに」という感情的な対立が生まれると、話は一気にこじれます。

法律では、こうした「不公平感」を是正するために、特別受益と寄与分という制度を設けています。

【特別受益・寄与分のポイント】
特別受益や寄与分においては、証拠が必要になるため、本人の証言に加えて、領収証などの証拠を集めておくことが重要です。
証拠を整理すれば、本人の証言の矛盾や嘘にも気が付きます。

① 特別受益

専門用語解説:特別受益(とくべつじゅえき)
相続人の中に、生前に親から「結婚資金」「マイホーム購入資金」などの贈与(持ち戻し免除の意思表示がないもの)や遺贈(遺言による贈与)を受けた人がいる場合、その財産を遺産分割の際に遺産の前渡しとみなし、その受益者の相続分を減らして公平を図る制度です。

例えば、長男が親から住宅購入資金として1,000万円の援助を受けていた場合、この1,000万円を遺産に足し戻して相続分を計算します。これが「持ち戻し」の考え方です。

② 寄与分

専門用語解説:寄与分(きよぶん)
相続人の中に、被相続人(亡くなった人)の財産の維持または増加に特別に貢献した人(例:親の事業を手伝って無給で働いた、長期間にわたり献身的な介護を行ったなど)がいる場合、その貢献度に応じて遺産分割の際にその貢献分を遺産から先に受け取れる制度です。

「実家の処分も私が担った」「親の介護は私しかやっていない」といった貢献を正当に評価してもらうための制度ですが、その貢献度を証明するのは容易ではありません。

年末年始に、親御さんの口から「誰に、どのような援助をしたか」「誰に、どのような世話になったか」を聞き出し、メモしておくことが、将来の遺産分割をスムーズにする鍵になります。


3. 「遺言書」と「遺留分」の勘違いと落とし穴

遺言書の準備と有効性

「うちの親は遺言書を書いてくれているから大丈夫!」と安心している方もいるかもしれません。しかし、その遺言書が法的に有効でなければ、結局は遺産分割協議が必要になり、争族の原因になります。

特に、ご自分で書かれる「自筆証書遺言」には、日付の記載漏れや全文の自書(自分で書くこと)がないなど、よくある失敗や間違いが多く見受けられます。

不動産オーナーや資産家の方、会社経営者など、財産が多岐にわたる方は、最も有効性が高く、安全な「公正証書遺言」を作成されることを強くおすすめします。

遺言書の比較

比較項目 自筆証書遺言 公正証書遺言
作成方法 全文自書が原則(財産目録はPC可) 公証役場で公証人が作成
証人の要否 不要 2人必要
有効性のリスク 高い(形式不備・内容不明確) 非常に低い(専門家関与)
検認(家庭裁判所の手続き) 必要(法務局保管制度利用の場合不要) 不要
紛失・偽造のリスク 高い 非常に低い(原本が公証役場に保管)

遺留分侵害額請求のリスク

「遺言書に『全財産を長男に相続させる』と書いてあるから、他の兄弟には文句を言わせない!」と考えるのは勘違いです。

相続人には、兄弟姉妹を除く配偶者・子・直系尊属に「遺留分(いりゅうぶん)」という、最低限保障された遺産取得分があります。

専門用語解説:遺留分(いりゅうぶん)
兄弟姉妹以外の法定相続人に保障されている、遺産のうちの一定割合を受け取る権利のことです。たとえ遺言で「全財産を特定の一人に」と書かれていても、遺留分を侵害された相続人は、財産を多く受け取った者に対し、侵害された分の金銭の支払いを請求できます(遺留分侵害額請求)。

この遺留分をめぐる争いは、感情的な対立が絡みやすく、一度こじれると解決が非常に困難になります。

年末年始に、親御さんの意思と、各相続人の遺留分を侵害しない財産配分について話し合い、必要であれば弁護士に相談しながら遺言書を作成することが、将来遺留分侵害額請求を受けるリスクを回避する最善策です。


4. 実家の処分と共有物分割請求の落とし穴

「実家(不動産)」は、遺産分割で最も揉めやすい財産の一つです。

特に、空き家になった実家を、複数の相続人が「共有」のまま放置してしまうケースは、注意点が多い落とし穴です。

空き家の固定資産税や管理費だけがかさんでいく上、売却(処分)するには共有者全員の同意が必要です。

専門用語解説:共有物分割請求(きょうゆうぶつぶんかつせいきゅう)
複数の人が共同で所有している不動産(共有物)について、共有者の一人が他の共有者に対して、その共有物の分割を求める権利です。協議でまとまらなければ、裁判所に共有物分割訴訟を提起することになります。

年末年始の集まりで、「実家を誰が相続し、どう処分するか」について、価値評価も含めて具体的に話し合っておきましょう。

「長男が相続して、他の兄弟には代償金を支払う」(代償分割)など、具体的な解決方法を検討する必要があります。


5. 弁護士に遺産相続を依頼するメリットとゴール

メリット 具体的なサポート内容
① 紛争予防と早期解決 遺言書の有効性確保、遺留分を考慮した遺言書の作成、相続税対策、成年後見のサポート。遺産分割調停や遺留分侵害額請求の代理など、迅速かつ有利な解決を目指します。
② 複雑な手続きの全てを任せられる 相続人調査、相続財産調査(使い込みの追及含む)、各種名義変更など、煩雑で専門的な相続手続を全部任せたい方のニーズに応えます。
③ 特別受益・寄与分の正当な主張 特別受益や寄与分の立証資料の収集、法的な根拠に基づいた主張・交渉により、不公平感を解消し、ご依頼者様の権利を守ります。
④ 精神的な負担の軽減 親族間の直接的な交渉を弁護士が担うため、遺産分割調停を申立てられた方や遺留分侵害額請求を受けた方などの精神的ストレスを大きく軽減できます。
⑤ 不動産・税務のプロとの連携 実家の処分や空き家問題、複雑な相続税対策など、税理士や不動産鑑定士などの専門家と連携し、ワンストップで最適な解決策を提供します。

蒼生法律事務所へご相談ください

年末年始は、相続についてじっくり考える絶好の機会です。

もし今、あなたが遺産相続(成年後見、相続人調査、相続財産調査、遺産分割、遺留分、遺言、寄与分、特別受益、空き家、相続税対策)でお悩みの方、または資産家、医師、会社経営者、不動産オーナーとして今後の相続問題にリスクを感じているなら、まずはお話を聞かせてください。

「相続放棄を検討している」「相続財産の調査を依頼したい」「親族間の交渉を任せたい」など、どんなご相談でも構いません。

当事務所は、難しい専門用語も初心者の方にわかりりやすいように丁寧に解説し、依頼者様に寄り添った親身なサポートをお約束します。

蒼生法律事務所では、初回無料相談を承っております。いつでもお気軽にお電話(06-6809-3033)・メール(souseilaw33799@gmail.com)などでお問い合わせください。


本記事の出典

  1. 成年後見制度(法務省)
  2. 自筆証書遺言保管制度について(法務省)
  3. 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)(法務省)
  4. 相続に関するルールが大きく変わります(法務省)
  5. 相続の放棄の申述(裁判所)