
蒼生法律事務所 代表弁護士 平野 潤です。本日は、最近ご相談が増えた「寄与分(きよぶん)」について解説します。
「親の介護を何年も続けてきた」「家業を無給で手伝ってきた」…そのような場合に、相続が発生したとき、「法律で決められた通りに分けるだけじゃ、なんだか納得いかない!」と感じることはありませんか?
多くの場合、相続人の貢献度合いは様々です。法定相続分(法律で定められた取り分)だけでは測れない、亡くなった方(被相続人)への「特別な貢献」を評価し、相続分に反映させる制度。それが、寄与分(きよぶん)です。
この寄与分、非常に奥が深く、認められるためのハードルも決して低くありません。しかし、知っておくと、いざというときに泣き寝入りせずに済む、非常に重要な制度です。
この記事では、相続問題に直面されている方、特にご両親やご親族に大きな貢献をしてきたけれど、その努力が報われるか不安な方を対象に、寄与分のギモンをQ&A形式で弁護士の私が徹底解説します。
- Q1. そもそも寄与分って何ですか? ~ 定義と趣旨~
- Q2. 寄与分に関する根拠となる法令は何ですか?
- Q3. 寄与分が認められると、どんな効果があるのですか? ~計算方法~
- Q4. 寄与分として認められる「特別な貢献」とは、どんなものですか? ~要件と判断基準~
- Q5. 寄与分の具体的な計算方法や認められる金額の目安は?
- Q6. 寄与分が認められた事例と、認められなかった事例を教えてください。
- Q7. 寄与分を主張する際のリスクは何ですか? ~注意点、落とし穴~
- Q8. 寄与分を巡る「よくある失敗」や「勘違い」を教えてください。
- Q9. 寄与分の主張は、どのように進めていけばいいですか? ~協議・調停・審判~
- Q10. 弁護士に寄与分の調査・請求を依頼するメリットは何ですか?
- 最後に:あなたの「特別な貢献」を、どうか泣き寝入りさせないでください。
- まずは気軽にお問い合わせください
Q1. そもそも寄与分って何ですか? ~ 定義と趣旨~
A1. 「特別な貢献」を評価して、公平な遺産分割を実現する仕組みです。
寄与分とは、共同相続人(亡くなった方の財産を相続する人たち)の中に、亡くなった方(被相続人)の財産の維持または増加に「特別な貢献」をした人がいる場合に、その貢献度に応じて、その人に多く遺産を取得させる制度です(民法第904条の2第1項)。
- 特別な貢献:通常期待される扶養義務や協力義務の範囲を超えた行為を指します。例えば、同居している子の親への世話は通常、特別な貢献とは見なされにくいですが、重度の要介護状態の親に対して長期間、専門的な介護を無償で提供し続けた場合は、特別な貢献と認められる可能性があります。
この制度の趣旨(目的)は、法定相続分通りに分けると、貢献した人(寄与者)にとって不公平になるのを避けるため、「実質的な公平」を図ることにあります。
Q2. 寄与分に関する根拠となる法令は何ですか?
A2. 民法に規定されています。
根拠となる条項は、民法第904条の2です。
民法第904条の2(寄与分)
共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、家庭裁判所は、当事者の請求により、寄与をした者の相続分を定めるについて、その寄与を考慮することができる。
条文にある通り、寄与分は「相続分を定めるについて」考慮されるものであり、最終的には家庭裁判所が判断することになります。
出典:民法(明治二十九年法律第八十九号) (e-Gov法令検索)、https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
Q3. 寄与分が認められると、どんな効果があるのですか? ~計算方法~
A3. 遺産総額からあなたの貢献分を差し引いてから、遺産分割を行います。
寄与分が認められると、その効果は以下の通りです。
- 遺産総額からの控除:まず、亡くなった方の財産総額から、寄与者(貢献した人)の寄与分を差し引きます。
- 相続分の算定:差し引いた残りの財産を、共同相続人全員の「みなし相続財産」として、各相続人の法定相続分(または指定相続分)に基づいて分割します。
- 寄与者の最終取得額:寄与者は、上記2で算定された相続分に、寄与分を上乗せした額を取得することになります。
計算式で見てみましょう
| 項目 | 式 |
|---|---|
| みなし相続財産 | 実際の遺産総額 — 寄与分 |
| 各相続人の相続分 | みなし相続財産 × 各人の法定相続分 |
| 寄与者の最終取得額 | 各相続人の相続分 + 寄与分 |
| その他の相続人の最終取得額 | 各相続人の相続分 |
つまり、寄与分は、「相続開始前に、寄与者が亡くなった方から先行して特別に受け取ったもの」として扱うことで、実質的な公平が図れるように調整するイメージです。
Q4. 寄与分として認められる「特別な貢献」とは、どんなものですか? ~要件と判断基準~
A4. 通常期待される義務を超え、財産の維持・増加に因果関係があることが必要です。
寄与分が認められるには、次の4つの要件をすべて満たす必要があります。
| 要件 | 内容 | 説明 |
|---|---|---|
| 1. 共同相続人であること | 寄与分を主張できるのは、亡くなった方の共同相続人(兄弟姉妹相続を除く)に限られます。 | 亡くなった方の配偶者や子、親などです。 |
| 2. 特別な寄与であること | 通常の夫婦間の協力義務や親子の扶養義務の範囲を超えた行為であること。 | 単に同居して身の回りの世話をした程度では認められにくいです。 |
| 3. 財産の維持または増加に貢献したこと | 貢献の結果、亡くなった方の財産が減らずに済んだ(維持)、または財産が増えた(増加)こと。 | 介護によりヘルパー代を支払わずに済んだ(維持)、家業を手伝い事業が発展した(増加)など。 |
| 4. 因果関係があること | 寄与者の貢献と、財産の維持または増加との間に原因と結果の関係があること。 | たまたま財産が増えたのではなく、あなたの貢献があったからこそ財産が増えた、という証明が必要です。 |
具体的な貢献のパターン(寄与分の類型)
寄与分の特別な貢献は、主に以下の5つの類型に分類されます。
- 家業従事型:亡くなった方の事業に無償または低額な報酬で従事し、事業の発展に貢献した。
- 財産給付型:亡くなった方の事業資金や生活資金として金銭を贈与したり、債務を弁済したりした。
- 療養看護型:亡くなった方が重度の要介護状態のときに、長期間、献身的な療養看護を無償で行い、本来かかるはずの費用(介護費用など)の出費を免れさせた。
- 扶養型:亡くなった方を通常期待される以上のレベルで無償で扶養した。
- 財産管理型:亡くなった方の財産を無償で管理・運用し、財産の維持・増加に貢献した。
Q5. 寄与分の具体的な計算方法や認められる金額の目安は?
A5. 類型によって計算方法が異なり、厳密な評価が必要です。
寄与分の金額は、その貢献の類型に応じて、家庭裁判所が個別の事情を総合的に考慮して決めます。計算方法は非常に複雑で、一律の基準はありませんが、類型ごとの評価の考え方は次の通りです。 ※一つの目安として考えてください。
| 類型 | 金額の評価方法(考え方) |
|---|---|
| 家業従事型 | 本来得られたはずの年間給与額×(1-生活費控除割合)×寄与年数×事業への貢献割合 |
| 財産給付型 | 贈与額×貨幣価値変動率×裁量的割合 |
| 療養看護型 | 介護報酬額(ヘルパー代など)相当額×介護日数×裁量的割合 |
例えば、「療養看護型」では、介護期間、要介護度、介護の内容などを基に、福祉サービスや入院費用の実費相当額を算出し、その一部が寄与分として認められるのが一般的です。全額が認められるわけではありません。
Q6. 寄与分が認められた事例と、認められなかった事例を教えてください。
A6. 裁判所は「特別性」を非常に厳しく見ています。
寄与分を巡る裁判例は非常に多くありますが、ここでは「療養看護型」を中心に、認められるケースと認められないケースの傾向をご紹介します。
1. 認容例(寄与分が認められた事例)
- 事例の傾向:長期間(例えば10年以上)にわたり、被相続人が重度の要介護状態(寝たきり、重度の認知症など)であり、寄与者が献身的かつ専門的な介護を無償で継続しため、相続財産の維持に貢献した場合。
- 裁判例:ある判例では、寄与者である子(と妻)が、半身不随となった母に対して約13年間にわたり、入院看護や自宅介護を継続し、その結果、家政婦代などの介護費用の負担を免れたとして、寄与分として数百万円を認めた例があります。
2. 棄却例(寄与分が認められなかった事例)
- 事例の傾向:同居の家族として通常期待される世話の範囲内である場合や、介護期間が短い場合、または、介護の負担に見合う対価(生活費の提供など)をすでに受けていたと評価された場合。
- 裁判例:ある判例では、被相続人(父)の身の回りのお世話や家事に従事した娘の貢献について、「同居していた夫婦間の扶助義務や親族間の協力義務として通常想定される範囲内」であり、「特別の寄与」とは認められないとして、寄与分の請求を棄却しています。
このように、裁判所は「特別の寄与」の要件を厳格に判断しており、「私は頑張った!」という気持ちだけでは認められません。客観的な証拠に基づく厳密な「経済的評価」が必須となります。
Q7. 寄与分を主張する際のリスクは何ですか? ~注意点、落とし穴~
A7. 証拠がない、感情的になる、協議がこじれる、などが主なリスクです。
寄与分を主張するときには、いくつかの落とし穴とリスクがあります。
- ❌証拠がない
最大の落とし穴です。寄与分は「言った者勝ち」ではありません。介護記録(いつ、どのような介護をしたか)、医師の診断書、要介護認定の記録、家業従事の記録(帳簿、給与明細など)といった客観的な証拠がなければ、家庭裁判所はあなたの貢献を経済的に評価できません。 - ❌感情的な対立の激化
寄与分の主張は、「自分はこれだけ頑張ったのに、他の兄弟は何もしてない」というメッセージになりがちで、他の相続人との感情的な対立を激化させるおそれがあります。遺産分割協議が長期化し、結局、多大な時間と費用を費やすことになりかねません。 - ❌相続分が減る可能性(寄与分ゼロの場合)
協議で寄与分が認められるためには、他の相続人全員の合意が必要です。合意できない場合は家庭裁判所の審判(しんぱん)に移行しますが、裁判所が「特別な寄与」を認めなかった場合、あなたの主張はゼロとなり、通常の法定相続分しかもらえません。
特に注意が必要なケース:寄与分を主張できるのは共同相続人のみです。例えば、亡くなった方の子の配偶者(嫁や婿)が献身的に介護しても、その配偶者自身は相続人ではないため、原則として、寄与分を主張できません。(ただし、その配偶者の貢献を、履行補助者によるものとして、相続人である子が「寄与分」として主張できる可能性はあります)
Q8. 寄与分を巡る「よくある失敗」や「勘違い」を教えてください。
A8. 「遺産分割協議書に合意した後の主張」や「自分の取り分が増える確信」です。
1. 勘違い:「特別受益」との混同
- 特別受益(とくべつじゅえき)は、一部の相続人が生前に亡くなった方から受けた「特別の利益」(例:住宅購入資金の援助、多額の学費など)を指します。
- これに対し、寄与分は、相続人が亡くなった方の財産を増やしたり維持したりした「貢献」を指し、真逆の概念です。
特別受益も寄与分も、最終的な相続分の算定時に考慮される点は共通していますが、その意味内容は大きく異なります。
2. 失敗:遺産分割協議書への署名・捺印
- 寄与分は、遺産分割協議の中で主張・決定されるべき事項です。
- 一度、寄与分を主張せずに遺産分割協議書に署名・捺印し、遺産分割を確定させてしまうと、後から「やっぱり寄与分が欲しい」と主張することは極めて難しくなります。
- 「とりあえず遺産分割をまとめてから、後で寄与分だけ請求しよう」は通用しません。まずは主張しましょう。
Q9. 寄与分の主張は、どのように進めていけばいいですか? ~協議・調停・審判~
A9. 協議、調停、審判の3ステップで進めます。
寄与分は、まず共同相続人同士の話し合いで決めることが原則です。
- 遺産分割協議(話し合い):
まずは他の相続人に、あなたの貢献の内容と、寄与分として希望する金額を提示し、協議を行います。 - 遺産分割調停(家庭裁判所の話し合い):
協議で合意に至らなければ、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。この調停の中で、同時に寄与分の主張も行います。調停委員が間に入り、話し合いでの解決を目指します。 - 寄与分を定める審判(家庭裁判所の判断):
調停でも合意に至らない場合、調停は不成立となり、自動的に審判に移行します。審判では、裁判官が提出された証拠(Q7参照)に基づき、寄与分の有無と金額を決定します。
この手続きは、特に審判になると法的な知識と厳密な証拠の提出が求められるため、非常に難易度が高いです。
Q10. 弁護士に寄与分の調査・請求を依頼するメリットは何ですか?
A10. 「特別な貢献」を法的に評価し、あなたの正当な取り分を勝ち取ります。
寄与分を弁護士に依頼するメリットは、多岐にわたりますが、特に以下の点が重要です。
- 感情論ではなく「経済的な価値」で主張できる
「私は頑張った」という感情的な訴えは、裁判所では通用しません。弁護士は、あなたの介護や家業従事といった貢献を、法的な根拠と客観的な証拠に基づき、「介護報酬額相当額」や「労働対価相当額」として厳密な経済的価値に換算して主張します。 - 厳格な証拠収集と法的手続きの代行
寄与分を認めてもらうための証拠(介護記録、通帳、医師の診断書など)の収集を代行し、不足がないか精査します。また、裁判所での調停・審判手続きにおいても、法律のプロとして、適切なタイミングで適切な主張・立証を行い、あなたの負担を最小限に抑えつつ、最大限の寄与分獲得を目指します。 - 他の相続人との円滑な交渉
他の相続人との感情的な対立は、寄与分請求において最大の障害となります。弁護士が代理人となることで、冷静かつプロフェッショナルな交渉が可能となり、協議の長期化や対立の激化を防ぎ、早期解決につながる可能性が高まります。
最後に:あなたの「特別な貢献」を、どうか泣き寝入りさせないでください。

遺産相続の現場では、「自分だけが頑張ってきたのに、何もしていない兄弟と同じ取り分なんて納得できない」という声は後を絶ちません。
特に、お金持ちの方、医師や会社経営者、不動産オーナーなど、財産額が大きいご家庭ほど、わずかな貢献額の違いが最終的な取得額に大きく影響します。
あなたの長年の献身的な努力や、相続財産を維持・増加させた功績は、正当に評価されるべきです。
しかし、寄与分は、それを認めてもらうためのハードルが高いのも事実です。証拠が不十分であったり、法的な主張が適切でなかったりすると、せっかくの貢献も水泡に帰してしまうリスクがあります。
蒼生法律事務所では、これまで数多くの相続問題に取り組み、依頼者様の正当な権利を守ってきました。
あなたの「特別な貢献」が、法的にどのように評価されるのか、どのような証拠が必要なのか。まずは、私たち弁護士に相談してみませんか?
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※本記事は、寄与分制度の一般的な解説を目的としており、個別の事案について法的見解を表明するものではありません。具体的な法的判断や手続きについては、必ず専門家にご相談ください。

2004年の弁護士登録以降、個人・法人問わず幅広い事件を担当し、クライアントにとっての重大事には誠実かつ丁寧に寄り添う。命運に配慮し、最善策を模索。豊富な実績と十分なコミュニケーションで、敷居の高さを感じさせない弁護士像を追求してきた。1978年大阪府出身、京都大学法学部卒業。2011年に独立。不動産・労務・商事・民事・破産・家事など多様な分野を扱い、2024年6月に蒼生法律事務所へ合流。相続・遺言

