
みなさん、こんにちは! 蒼生(そうせい)法律事務所、代表弁護士の平野 潤(ひらの じゅん)です。
相続財産というと、現金や不動産をイメージされる方が多いですが、意外と取り扱いが難しく、トラブルになりやすいのが「株式」の相続です。
「父が亡くなったが、どこの証券会社を使っていたか分からない」
「古い株券(かぶけん)が出てきたけど、これって価値があるの?」
「実家が会社経営(非上場)だけど、この株はどう分けたらいい?」
特に、医師の方や会社経営者様、不動産オーナー様など、資産運用や事業承継で株式をお持ちだった場合、その調査や評価は非常に複雑になりがちです。
そこで今回は、「弁護士が解説!株式の相続~調査や評価のポイント」と題して、株式相続の「?」をスッキリ解決していきます。初心者の方にも分かりやすく、親しみやすいトーンで解説しますので、ぜひ最後までお付き合いください!
ステップ1:【調査】どこの株式?どこの証券会社?

相続が始まったら、まずは「どんな株式が」「どこに」「どれだけあるか」を確定させる「相続財産調査」が必要です。ここが全てのスタートです。
| 状況 | 主な確認先 | 取れる情報 | ポイント |
|---|---|---|---|
| どこの証券会社か不明 | 証券保管振替機構(JASDEC/ほふり) | 口座を持っていた証券会社の一覧(登録済加入者情報) | 相続人から「登録済加入者情報開示請求」で照会→各社に残高証明を依頼 |
| 古い株券・配当書類だけある | 各社の株主名簿管理人(信託銀行) | 特別口座の有無・保有株数 | 郵送物に記載の「株主名簿管理人」へ照会(例:三菱UFJ信託等) |
| 会社名が古い・見当たらない | 発行会社・信託銀行のサイト、適時開示履歴 | 合併・社名変更後の現社名 | 諦めず履歴を確認。必要に応じて専門家が調査 |
1. どこの証券会社か分からない! → 「ほふり」に聞く
亡くなった方がどの証券会社と取引していたか分からない、というケースは非常に多いです。 タンス預金ならぬ「タンス株」や、ネット証券でご本人しかID・パスワードを知らない、なんてことも…。
この時に頼りになるのが「証券保管振替機構(しょうけんほかんふりかえきこう)」、通称「ほふり(JASDEC)」です。
※【専門用語解説:ほふり(証券保管振替機構)】
日本国内の上場株式(証券取引所で売買できる株式)のほとんどは、この「ほふり」という機関で電子的に集中管理されています。どの証券会社の、誰の口座に、どの会社の株が何株あるか、という情報を全て把握している「株式版の戸籍係」のような存在です。
相続人であれば、「ほふり」に対して「登録済加入者情報開示請求」という手続きを行うことができます。 これにより、亡くなった方が口座を持っていた証券会社(加入者)の一覧が分かります。
この一覧を元に、各証券会社に「残高証明書」の発行を依頼すれば、保有株式の明細が判明します。
(出典:登録済加入者情報開示請求(相続人)のご案内(株式会社証券保管振替機構) https://www.jasdec.com/procedure/shareholders/disclosure/direct/)
2. どこの株式か分からない! → 「信託銀行」に聞く

「ほふり」で分かるのは、証券会社に預けられている(振替)株式です。
では、以下のような場合はどうでしょう?
- 昔の「株券(紙の証券)」がタンスから出てきた。
- 郵便で「配当金領収証」だけが届いている。
2009年に上場会社の株券はすべて電子化(ペーパーレス化)されました。
この時、証券会社の口座に預けなかった株式(タンス株など)は、発行会社(株を発行した会社)が指定する「信託銀行」に「特別口座」という形で自動的に開設され、管理されています。
※【専門用語解説:信託銀行(株主名簿管理人)】
多くの会社は、株主リストの管理や配当金の支払い業務を、三菱UFJ信託銀行や三井住友信託銀行といった信託銀行に委託しています。これを「株主名簿管理人」と呼びます。
届いた郵便物(配当金計算書や株主総会招集通知など)を見れば、必ず「株主名簿管理人」として信託銀行名が記載されています。その信託銀行に問い合わせることで、特別口座の有無や保有株式数を確認できます。
3. 会社名が変わっている!(合併・社名変更)
古い株券や書類だと、知らない会社名が書かれていることもあります。
「こんな会社、上場していない…」と諦めるのは早いです! 会社は合併や社名変更(商号変更)を繰り返します。
例えば、昔の「新日本製鐵」の株は、合併を経て現在の「日本製鉄」の株になっています。
これも、信託銀行のウェブサイトなどで調べることができますし、もちろん弁護士にご依頼いただければ調査可能です。
ステップ2:【評価】その株式、いくらの価値がある?

株式の調査が終わったら、次は「その株がいくらなのか」を評価します。
これは、相続税の申告の際にも、相続人間で公平に分ける「遺産分割」の際にも、非常に重要です。
| 区分 | 評価の基本 | 評価時点の取扱い | 備考 |
|---|---|---|---|
| 上場株式 | 市場価格(株価) | 相続税:死亡日の終値等「4つの平均のうち最も低い額」を選択可 遺産分割:合意時点などの時価(慣行) |
税務と分割で時点が異なりやすい |
| 非上場株式 | 税法の方式に基づく算定 | 会社規模・株主区分で方式選択(類似業種比準/純資産価額/配当還元など) | 専門家(税理士・会計士)と連携が必須 |
1. 上場株式の評価
上場株式は、市場で価格(株価)がつくため、評価は比較的カンタンです。
ただし、「いつの時点の価格で評価するか」が重要です。
• 相続税の申告(税金計算)の場合 原則として、亡くなった日(相続開始日)の「終値(おわりね)※」を使います。
※その日の取引の最後の値段。
ただし、特例として、以下の4つのうち「一番低い金額」を選んでOK、とされています。
- 1. 亡くなった日の終値
- 2. 亡くなった月の「毎日の終値」の平均額
- 3. 亡くなった月の「前月」の「毎日の終値」の平均額
- 4. 亡くなった月の「前々月」の「毎日の終値」の平均額
(出典:No.4632 株式の評価|相続税|国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4632.htm)
※遺産分割協議(相続人間での話し合い)の場合 税金計算とは別です。
いつの時点の株価で分けるか、法律に決まりはありません。
一般的には、話し合いがまとまった時点(遺産分割時)の時価で計算することが多いです。 (※ここはよくモメるポイントです。後述します)
2. 非上場株式(未公開株)の評価

ここが最大の難関です。
会社経営者様(オーナー社長)や、医療法人(クリニック)の理事長様などが亡くなった場合、この非上場株式の相続が発生します。
非上場株式は市場価格がありません。
「じゃあ、価値はゼロ?」 とんでもない! 会社の業績や資産によっては、莫大な価値(数千万、数億円)になることも珍しくありません。
評価方法は非常に複雑で、会社の規模や状況に応じて、税法で細かくルールが決められています。
【専門用語解説:非上場株式の評価方法(例)】
- 類似業種比準価額方式: 似たような業種の上場会社の株価などを参考に計算する方法。大会社の場合。
- 純資産価額方式: 会社の全財産を時価で売ったらいくらになるか、で計算する方法。小会社の場合。
- 配当還元方式: その株から得られる配当金を元に逆算する方法。同族株主以外の株主が取得する場合。
(出典:No.4638 取引相場のない株式(出資)の評価|相続税|国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4638.htm)
これらの計算は、税理士や公認会計士といった専門家の領域です。
非上場株式がある場合は、まず弁護士にご相談いただき、提携する専門家と連携して正確な評価額を算定する必要があります。
ステップ3:【取得】配当金と権利の消滅

| テーマ | 判断基準 | 実務上の注意 |
|---|---|---|
| 配当金の帰属 | 権利確定日が死亡日前なら未収配当として遺産に計上 | 計算書・確定日を必ず確認 |
| 配当金の消滅時効 | 定款で3年または5年などの定めが一般的 | 古い配当金領収証は信託銀行に期限照会し、失権の有無を確認 |
1. 亡くなった後の「配当金」はどうなる?

亡くなった後に、証券会社や信託銀行から「配当金計算書」や「配当金領収証」が届くことがあります。
この配当金が「誰のものか」は、「権利確定日」が故人の亡くなった日の前か後かで決まります。
「権利確定日」が亡くなった日より前であれば、それは故人の財産(未収配当金)として、遺産分割の対象になります。
2. 配当金の「消滅時効」に注意!
配当金は、郵便局で換金できる「領収証」形式で送られてくることがありますが、遺産分割協議がまとまらないなどの理由で、これを換金しないまま放置しているケースが少なくありません。
ここで注意したいのが「消滅時効(しょうめつじこう)」です。
多くの会社では、定款(会社のルールブック)で「配当金の支払開始から満3年または満5年を経過しても受け取らない場合、会社はその支払義務を免れる」と定めています。
つまり、換金しないまま放置していると、配当金を受け取ることができる権利が消滅してしまうのです。
相続調査の過程で古い配当金領収証が見つかったら、すぐに発行元の信託銀行に連絡し、支払い期限が過ぎていないか確認しましょう!
株式相続の「落とし穴」と「弁護士のメリット」

| 落とし穴 | 典型例 | 対策(本文の要点) |
|---|---|---|
| 評価時点の勘違い | 死亡時100→分割時200で不公平感 | 「いつの時点の価格か」を全員合意し記録 |
| 非上場株の未評価 | 出資額で安易に評価→後で高値判明 | 税法方式で正確に評価、専門家と連携 |
| 分け方で紛糾 | 100株を3人でどう配分? | 現物分割/代償分割/換価分割を比較検討 |
落とし穴①:「評価時点」の勘違いで大モメ!
【失敗例】父が亡くなった時(相続開始時)にA社の株価が100万円でした。
遺産分割協議で「兄が100万円のA社株」「弟が100万円の現金」で分けました。
しかし、その1年後に名義変更する頃には、A社株は200万円に値上がりしていました。
弟は「不公平だ!」と主張し、協議のやり直しを求めてトラブルに…。
【解説】前述の通り、税金計算は「死亡時」ですが、遺産分割は「分割時」の時価で分けるのが一般的です。
株価は日々変動するため、「いつの時点の価格で分けるか」を相続人全員で合意して証拠を残しておきましょう。
落とし穴②:「非上場株式」の評価をせずに遺産分割した
【失敗例】父が経営していた会社の株(非上場)を、「価値が分からないから」と出資金と同額の「100万円」として長男が相続する内容で遺産分割協議書を作りました。
後日、他の相続人が調べたら、その株の本当の価値は5000万円だったことが判明。
「騙された!」として、遺産分割協議の無効を主張する裁判に発展しました。
【解説】非上場株式の価値を正しく評価せずに(あるいは隠して)行った遺産分割は、後から「錯誤(さくご)※」や「詐欺(さぎ)」として取り消されるリスクがあります。 ※重大な勘違いのこと。
落とし穴③:どうやって分けるかでモメる

【問題】相続人が3人(兄、姉、弟)で、B社の株が「100株」ありました。
100株は3で割り切れません。「誰が何株もらうか?」で大モメになりました。
【解説】株式のように物理的に分けにくい財産(不可分債権(ふかぶんさいけん)と言います)は、分け方が問題になります。
- 現物分割(げんぶつぶんかつ): 兄が34株、姉が33株、弟が33株…(単元未満株※になり売却が面倒)
- 代償分割(だいしょうぶんかつ): 兄が100株すべて相続する代わりに、姉と弟に株価相当額の現金(代償金)を支払う。
- 換価分割(かんかぶんかつ): 100株すべて売却して現金化し、その現金を3人で分ける。
どの方法がベストかは、ご家庭の事情や株式の特性(非上場株は売れない等)によります。
また、非上場株の場合、「株式譲渡制限」があるケースが少なくありませんので、注意が必要です。
※株式を譲渡する際に会社の承認が必要となる制度のこと。
株式相続こそ、弁護士にご相談ください!

| サポート領域 | 具体内容 |
|---|---|
| 調査代行 | ほふり開示請求、各証券会社の残高証明、特別口座照会、合併・社名変更履歴調査 |
| 評価の確実化 | 上場株の価格調査、非上場株は税理士と連携して適正評価 |
| 分割の設計 | 代償分割・換価分割など最適案提示、交渉・調停・審判まで対応 |
| 周辺論点 | 特別受益や遺留分侵害額請求の主張・防御を適正評価に基づき支援 |
ここまでお読みいただき、「株式の相続って、思ったより大変…」と感じられたのではないでしょうか。
特に、非上場株式が絡むケース、相続財産の種類が多いケース、相続人間で意見が対立しそうなケースは、専門家のサポートが不可欠です。
私たち蒼生法律事務所にご依頼いただくメリットは以下の通りです。
1.面倒な「調査」を全て代行します
- 「ほふり」への開示請求、各証券会社への残高証明依頼、信託銀行への特別口座の照会、合併履歴の調査など、煩雑な相続財産調査を全て代理人として行います。
2.「正確な評価」で公平な土台を作ります
- 上場株式の価格調査はもちろん、最も困難な非上場株式の評価についても、提携する税理士と連携し、正確な評価額を算定します。
3.「円満な分割」を法的にサポートします
- 「代償分割」「換価分割」など、ご事情に合わせた最適な遺産分割案をご提案します。もし話し合いが難しい場合は、代理人として他の相続人との交渉や、調停・審判の対応も行います。
4.「遺留分」や「特別受益」にも対応します
- 「兄が父の会社の株を全部生前贈与されていた(特別受益※)」 「遺言で会社の株を全て長男に相続させると書いてあり、私の取り分がない(遺留分※)」 といったケースでは、非上場株式の適正な評価に基づき、法的な権利(遺留分侵害額請求など)の主張をサポートします。
※【専門用語解説】
- 特別受益(とくべつじゅえき): 亡くなった方から生前に特別な援助(例:事業資金、住宅資金)を受けていた相続人がいた場合、その分を相続財産に加味して公平に分ける仕組み。
- 遺留分(いりゅうぶん): 兄弟姉妹以外の相続人(配偶者、子、親など)に、法律上最低限保障されている遺産の取り分のこと。
おわりに
株式、特に非上場株式の相続は、単なる名義変更手続きではありません。
それは、亡くなった方が築き上げた「事業」や「資産」そのものを引き継ぐ、重大な法的手続きです。
「相続財産の調査を丸ごとお願いしたい」 「株式がたくさんありすぎて対応できない」 「兄弟と公平に分けたいが、どうしたらいいか分からない」
蒼生法律事務所は、そんな皆様のお悩みに、親身になって寄り添います。 相続問題は、専門家が早期に関わることで、防げるトラブルがたくさんあります。
どんな些細なことでも構いません。 まずはお気軽にお問い合わせください。
サポート体制

蒼生法律事務所では、相続問題に精通した弁護士がチーム体制でサポート し
初回無料相談を実施しております
まずはお気軽にご相談ください。

2004年の弁護士登録以降、個人・法人問わず幅広い事件を担当し、クライアントにとっての重大事には誠実かつ丁寧に寄り添う。命運に配慮し、最善策を模索。豊富な実績と十分なコミュニケーションで、敷居の高さを感じさせない弁護士像を追求してきた。1978年大阪府出身、京都大学法学部卒業。2011年に独立。不動産・労務・商事・民事・破産・家事など多様な分野を扱い、2024年6月に蒼生法律事務所へ合流。相続・遺言


