弁護士が解説!預貯金の相続における失敗事例5選~注意点と対応

こんにちは! 蒼生(そうせい)法律事務所、代表弁護士の平野 潤(ひらの じゅん)です。

「相続」と聞くと、なんだか難しくて大変そう…と感じる方も多いかもしれません。
特に、亡くなった方(「被相続人(ひそうぞくにん)」といいます)が大切に遺してくれた「預貯金」の相続は、誰もが関わる可能性のある身近な問題ですが、実は多くの「落とし穴」が潜んでいます。

「手続きが面倒だから…」 「家族間で揉めたくないから…」 と後回しにしたり、逆に良かれと思ってやったことが、後で大きなトラブルになったりすることも少なくありません。
大切な遺産をめぐって家族が争う「争続(そうぞく)」になってしまうのは、本当に悲しいことです。

この記事では、遺産相続の中でも特に「預貯金」に焦点を当て、弁護士である私の経験から見えてきた「よくある失敗事例」を5つピックアップして、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。

  • 現在、まさに相続手続でお悩みの方
  • 会社経営者や不動産オーナー、医師など資産を有する方
  • 遺産分割調停を申し立てられた方や、遺留分(いりゅうぶん)の請求をされた・したい方
  • 相続放棄を検討している方

など、多くの方に役立つ内容となっています。ぜひ最後までお付き合いください!


【失敗事例1】「役所に死亡届を出したから、銀行口座は当然凍結される」という勘違い

ご家族が亡くなると、まず役所に「死亡届」を提出しますよね。
多くの方が、「死亡届を出せば、役所から銀行に連絡が回って、自動的に故人の口座は凍結(入出金などができなくなる状態)される」と思っていらっしゃいます。

しかし、これは大きな勘違いです!
役所は、死亡届が提出されたからといって、金融機関に「〇〇さんが亡くなりましたよ」と連絡することはありません。

では、銀行はいつ故人の死亡を知るのでしょうか?
それは、「相続人(相続する権利のある人)から死亡の連絡(相続発生の申出)があった時」がほとんどです。
新聞のお悔やみ欄で見たり、銀行員がたまたま知ったりすることもありますが、基本的には家族からの申告によって口座が凍結されます。

◆ここに落とし穴!◆
もし、あなたが銀行に連絡する前に、他の相続人がキャッシュカードを使ってATMでお金を引き出してしまったらどうなるでしょう? 理論上は可能です。
もちろん、その引き出したお金は「遺産」の一部ですから、後で「遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)」(誰がどの財産をどれだけもらうかを話し合うこと)で清算すべきですが、「使ってしまって残っていない」と言われたり、引き出した事実を隠されたりすると、調査や返還交渉が非常に困難になります。

◆正しい対応◆
相続が発生したら、できるだけ速やかに、故人が口座を持っていた全ての金融機関(銀行、信用金庫、ゆうちょ銀行など)に電話または窓口で連絡し、「口座の名義人が死亡したこと」を伝え、口座を凍結してもらいましょう。
これにより、勝手な引き出しを防ぎ、遺産を安全に保全することができます。

※【用語解説:口座凍結(こうざとうけつ)】
金融機関が、口座名義人の死亡を知った時点で、その口座からの入出金、振込、引き落としなどを一切停止することです。これは、相続人が確定し、正式な手続き(遺産分割協議書や遺言書に基づく払い戻し)が完了するまで、故人の大切な財産を不当に動かされないように守るための重要な措置です。


【失敗事例2】「故人の預貯金先がどこにあるか分からない!」という問題

「父(母)は、お金の管理を全部自分でやっていたから、どこの銀行にいくら預金があるか全然わからない…」
「父(母)が認知症になってしまって、どこの銀行に預金があるか説明できなかった…」

これらは、非常によくあるご相談です。 通帳やキャッシュカードが見つかれば良いですが、最近はネットバンキングのみで通帳がないケースも増えています。

◆ここに落とし穴!◆
遺産調査が不十分なまま遺産分割協議を終えてしまうと、後から「あ、こんなところにも口座があった!」と判明した場合、原則として、その見つかった預金について再度、相続人全員で遺産分割協議をやり直さなければなりません
関係が良好ならまだしも、一度揉めてしまった後だと、再び話し合いのテーブルについてもらうのは至難の業です。

◆正しい対応(調査方法)◆
まずは、故人のご自宅を徹底的に探しましょう。

  • 通帳、キャッシュカード
  • 金融機関からの郵便物(利息計算書、満期のお知らせ、ダイレクトメールなど)
  • 貸金庫の鍵
  • 手帳やカレンダーへのメモ(銀行名や暗証番号など)

心当たりのある金融機関(自宅や昔の勤務先の近くなど)には、相続人であることを証明する戸籍謄本などを持参し、「残高証明書(死亡日時点の残高)」や「取引履歴(過去の入出金明細)」の発行を依頼します。

◆弁護士に依頼するメリット◆
ご自身での調査が難しい場合、弁護士は「弁護士会照会(べんごしかいしょうかい)」という強力な調査手段(弁護士法第23条の2に基づく制度)を使うことができます。これにより、銀行や証券会社などに対して網羅的に故人の口座の有無を照会することが可能になり、相続財産の「漏れ」を防ぐことができます。

※【用語解説:残高証明書(ざんだかしょうめいしょ)】
故人が亡くなった日(相続開始日)時点で、その口座にいくらの残高があったかを金融機関が公式に証明する書類です。遺産分割や相続税の申告に必要となります。


【失敗事例3】「葬儀費用として引き出した」が命取りに!? 相続放棄との関係

故人の口座が凍結される前に、葬儀費用や入院費用の清算のために、キャッシュカードで数十万円を引き出す…これも、よくやってしまいがちな行動です。

◆ここに落とし穴!◆
故人の預貯金を引き出して使う行為は、法律上、「私は相続します」という意思表示(=法定単純承認)をしたとみなされる可能性が非常に高いのです。

もし、故人に多額の借金(負債)があった場合、預貯金などのプラスの財産だけでなく、その借金もすべて引き継ぐことになってしまいます。
「借金があるなんて知らなかった! だから相続放棄(そうぞくほうき)したい!」と後で思っても、すでに預金を引き出して使ってしまった後では、「あなたは一度相続すると認めた(単純承認した)でしょ」として、相続放棄が認められなくなる危険性が高いのです。

「でも、葬儀費用は別なのでは?」 確かに、過去の裁判例では、故人の財産から社会通念上相当な範囲の葬儀費用を支払った場合は、単純承認にはあたらない、とされたものもあります。
しかし、「社会通念上相当な範囲」がいくらなのか明確な基準はなく、非常にリスクの高い行為です。ましてや、ご自身の生活費などに充てた場合は、ほぼ確実に単純承認とみなされます。

◆正しい対応◆
故人に借金があるかどうかわからない場合、または相続放棄を少しでも検討している場合は、故人の預貯金には絶対に手を付けてはいけません。ご自身の財産から一時的に立て替えて支払い、後で遺産分割の際に清算するのが最も安全な方法です。
判断に迷ったら、すぐに弁護士にご相談ください。

※【用語解説:相続放棄(そうぞくほうき)】
相続人が、故人の財産(プラスの財産も、借金などのマイナスの財産も)を一切受け継がないことを選択し、家庭裁判所に申述(もうしたて)することです。原則として、「自分が相続人になったことを知った時から3ヶ月以内」に手続きする必要があります。

※【用語解説:法定単純承認(ほうていたんじゅんしょうにん)】
相続人が、遺産の一部でも使ったり売ったり(処分)した場合や、上記の3ヶ月の期間内に相続放棄や限定承認の手続きをしなかった場合に、法律上、自動的にすべての遺産(借金含む)を相続したとみなされることです。

【出典】
・相続の放棄の申述(裁判所) https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html


【失敗事例4】「手続きが面倒だから…」と放置。預金が時効で消える!?

「一部の相続人が疎遠で連絡が取りにくい」
「遺産分割で揉めていて、話が進まない」
「手続きが複雑で、何から手をつけていいか分からず、つい…」
様々な理由で、故人の預貯金を何年も放置してしまうケースがあります。

◆ここに落とし穴!◆
銀行にお金を預けている権利(預貯金債権)にも、「消滅時効(しょうめつじこう)」があります。
2020年4月の民法改正でルールが変わりましたが、一般的に、銀行預金は最後の取引から5年または10年で時効にかかり、払い戻しを請求する権利が法律上は消滅する可能性があります。

(※実務上は、多くの金融機関が時効を主張せず払い戻しに応じてくれますが、法的な権利としては不安定な状態になりますし、対応は金融機関次第です。今後、消滅時効の主張がなされる可能性もあります)

さらに深刻なのは、「数次相続(すうじそうぞく)」の発生です。
例えば、お父様が亡くなり、その遺産分割(預貯金の解約など)をしないうちに、相続人であるお母様が亡くなってしまった…。
この場合、お父様の相続人(子供)と、お母様の相続人(子供)が、両方の遺産分割協議に関わることになります。 放置すればするほど、関係する相続人がネズミ算式に増えていき、手続きは指数関数的に複雑・困難になっていきます。

◆正しい対応◆
相続手続きは、面倒でも「鉄は熱いうちに打て」です。
相続が発生したら、なるべく早く相続人調査と財産調査を完了させ、遺産分割協議を進めることが、将来のトラブルを防ぐ最大の防御策です。

※【用語解説:消滅時効(しょうめつじこう)】
ある権利(この場合は「預金を払い戻して」と請求する権利)を持っていても、一定期間その権利を使わないままでいると、その権利自体が消滅してしまうという制度です。

【出典】
・民法(債権法)改正「消滅時効に関する見直し」(法務省) https://www.moj.go.jp/content/001255623.pdf

※【用語解説:数次相続(すうじそうぞく)】
最初の相続(一次相続)の遺産分割協議が終わらないうちに、その相続人の誰かが亡くなって、次の相続(二次相続)が開始されることです。


【失敗事例5】「口座凍結で葬儀代も払えない!」→ 仮払い制度を知らない

失敗事例1とは逆に、速やかに銀行に連絡して口座は凍結できた。しかし、当面の葬儀費用や、故人の入院費用の清算、残された家族の生活費が支払えずに困ってしまった…というケースです。

「遺産分割協議がまとまらないと、1円も引き出せないの?」
そんなことはありません!

2019年の民法改正(相続法改正)により、遺産分割協議が成立する前でも、一定額まで故人の預貯金を引き出すことができる「預貯金の仮払い制度」が創設されました。

◆制度の概要(2つの方法)◆

1.金融機関の窓口で直接払い戻す方法
他の相続人の同意がなくても、相続人単独で、一定額の払い戻しを受けられます。

1.金融機関の窓口で直接払い戻す方法 他の相続人の同意がなくても、相続人単独で、一定額の払い戻しを受けられます。

  • 上限額 =(相続開始時(死亡時)の預金額)×(1/3)×(その相続人の法定相続分)
  • ※ただし、一つの金融機関(支店ごとではなく)からは、合計で150万円までという上限もあります。

2.家庭裁判所に申し立てる方法(仮処分)
上記1の方法では足りない場合や、特定の支払い(例:故人の借金の返済期限が迫っているなど)のために預金が必要な場合、家庭裁判所に「遺産の仮分割の仮処分」を申し立て、まとまった金額の仮払いを認めてもらう方法もあります。

2.家庭裁判所に申し立てる方法(仮処分) 上記1の方法では足りない場合や、特定の支払い(例:故人の借金の返済期限が迫っているなど)のために預金が必要な場合、家庭裁判所に「遺産の仮分割の仮処分」を申し立て、まとまった金額の仮払いを認めてもらう方法もあります。

◆注意点◆
この制度で引き出したお金は、あくまで遺産の「前借り」です。 最終的な遺産分割協議では、仮払いを受けた分を差し引いて(「特別受益(とくべつじゅえき)」に準じて)計算・調整する必要があります。

使い道を明確にし、領収書などをきちんと保管しておくことが重要です。

※【用語解説:預貯金の仮払い制度】
遺産分割が終わる前でも、相続人が葬儀費用や当面の生活費などに充てるため、一定額まで故人の預貯金を引き出すことを認める制度です。

※【用語解説:法定相続分(ほうていそうぞくぶん)】
法律で定められた、各相続人が遺産を相続する割合の目安です。(例:相続人が配偶者と子供2人の場合、配偶者1/2、子供は各1/4)

【出典】
・相続された預貯金債権の払戻しを認める制度について(法務省)https://www.moj.go.jp/content/001278308.pdf


まとめ:預貯金の相続、失敗しないために弁護士ができること

ここまで、預貯金相続に関する5つの失敗事例を見てきました。
「口座凍結のタイミング」「預金先の調査」「相続放棄との関係」「放置のリスク」「仮払い制度」…たかが預貯金、されど預貯金。これだけでも、たくさんの法律問題や手続きが絡んでくることがお分かりいただけたかと思います。

特に、会社経営者や不動産オーナー、医師の方など、お持ちの財産が多岐にわたる場合や、会社の債務の連帯保証人になっている可能性がある場合などは、ご自身での判断は非常に危険です。

私たち蒼生法律事務所のような相続に詳しい弁護士にご依頼いただくことで、以下のようなメリットがあります。

  • 1. 正確な財産調査 「弁護士会照会」などの手法を駆使し、故人の預貯金口座や証券口座、不動産、借金などを漏れなく調査します。
  • 2. 面倒な手続きの代行 金融機関ごとの複雑な解約・払い戻し手続き、戸籍謄本の収集、遺産分割協議書の作成など、時間と手間のかかる作業をすべてお任せいただけます。
  • 3. 法的リスクの回避 「これは法定単純承認にあたるか?」「相続放棄すべきか?」といった専門的な法的判断を、ご状況に合わせて的確にアドバイスします。
  • 4. 円満な話し合い(交渉)のサポート 相続人同士で直接話しにくい場合も、弁護士が代理人として間に入り、冷静かつ法的な根拠に基づいた話し合い(遺産分割協議)を進められます。
  • 5. 総合的な解決 預貯金だけでなく、「遺言書が出てきた」「生前に多額の贈与(特別受益)がある」「介護を頑張った分(寄与分)を考慮してほしい」「遺留分を請求したい・された」といった、相続にまつわるあらゆる問題をワンストップで解決に導きます。

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