2025年2月21日、大阪商工会議所ビルにて、公益財団法人大阪コミュニティ財団主催の「相続・遺贈セミナー」が開催されました。
本セミナーでは、相続や遺贈に関する基本知識や実務のポイントを学ぶ場として、多くの方が参加されました。
本セミナーの第1部では、当事務所の泉宏明弁護士が講師を務め、「綺麗に贈ろう、遺贈のキホン」と題し、相続や遺贈の基礎知識を分かりやすく解説しました。
本記事では、当日のセミナー内容をレポートし、相続・遺贈を検討する際のポイントをお伝えします。
相続・遺贈とは?まず知っておくべき基本
講演の冒頭、泉弁護士は相続や遺贈の基本的な考え方について説明しました。
なぜ「遺贈」をするのか?
人が亡くなった際、その財産は相続人(家族など)に継承されるのが基本ですが、一部の方は以下の理由で「遺贈」を選択することがあります。
- 感謝や返礼の気持ちを込めて(支援してくれた人や団体へ)
- 社会貢献のため(NPOや慈善団体へ)
- 自己実現の一環として(想いを形にする手段として)
- 家族以外の大切な人に財産を託すため(法定相続人以外への配慮)
- 税制上のメリットを活用するため
泉弁護士は、「遺贈」は単なる財産の移転ではなく、故人の想いを未来へつなぐ大切な行為であると強調しました。
相続と遺贈の違いとは?
泉弁護士は、相続と遺贈の違いを明確に理解することが重要だと述べました。
・遺贈とは?
「相続人以外の者に財産を与える」のが遺贈です。
相続の場合、法律で定められた相続人(配偶者や子どもなど)が自動的に財産を継承しますが、相続人以外の人や団体へ財産を遺したい場合は「遺言書」による遺贈が必要です。
・遺贈の種類
特定遺贈 | 特定の財産(例:この不動産を○○に贈る) |
包括遺贈 | 財産全体の一定割合(例:全財産の30%を○○に贈る) |
また、遺贈に似たものとして「死因贈与」(生前に契約しておき、死亡時に財産を渡す)があり、契約形式である点が遺贈と異なります。
スムーズな相続・遺贈のために「遺言書」の準備を
泉弁護士は、「相続・遺贈をスムーズに進めるには遺言書の準備が不可欠」とし、以下の3つの遺言書の違いを説明しました。
■自筆証書遺言
- 自分で書く(手軽だが法的要件を満たさないと無効のリスクあり)
- 遺言書保管制度を活用すれば一定の安全性を確保できる
- 「日付の記入ミス」「内容の不明確さ」で無効になるケースが多い
■公正証書遺言(推奨)
- 公証役場で作成するため、最も安全で確実な遺言方法
- 法律家が関与するため、後々のトラブルが少ない
- 紛失・改ざんのリスクが低く、裁判所の検認不要
■秘密証書遺言
- 内容を秘密にできるが、あまり使われない
- 作成後の紛失や検認の手間がデメリット

泉弁護士のアドバイス:
「遺贈が絡む場合、公正証書遺言を強く推奨します。自筆証書遺言は無効になったり、相続人に無視される可能性があります。」
遺留分とその注意点
遺贈を行う際には、「遺留分」という相続人の最低限の取り分にも注意が必要です。
遺贈の割合が大きすぎると、相続人から「遺留分侵害額請求」が行われ、トラブルの原因となります。
- 遺留分の権利を持つ相続人 → 配偶者、子、親(兄弟姉妹は対象外)
- 法定相続分の1/2または1/3が遺留分として確保される

「円満な相続を実現するには、遺言書の内容を慎重に検討する必要があります。」
相続・遺贈を考えるときの実践的アドバイス
講演の最後に、泉弁護士は「具体的な遺贈の進め方」として、以下の3ステップを提案しました。
STEP 1:遺贈先を選ぶ
NPO、財団法人、自治体、教育機関など、どこに寄付するかを検討
「自分が応援したい団体」「信頼できる組織」を選ぶ
STEP 2:専門家に相談する
弁護士 → 紛争を防ぐための法的アドバイス
司法書士 → 登記の観点からの助言
税理士 → 税制優遇の活用と相続税の対策
STEP 3:遺言書を作成し、実行する
公正証書遺言の作成を推奨
相続人とトラブルにならないように慎重に検討
まとめ
今回のセミナーでは、「相続・遺贈」の基本から、具体的な遺言書の作成方法、遺留分の注意点まで幅広く解説させていただきました。
特に、泉弁護士の講演では、実務的なアドバイスが豊富に紹介され、参加者からも多くの質問が寄せられました。
「相続・遺贈は、亡くなった後にトラブルを避けるための重要な準備」
「今のうちにできることをしっかり考え、未来に備えることが大切」
当事務所では、相続・遺贈に関するご相談を承っております。
「相続トラブルを防ぎたい」「遺言書を作成したい」とお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。