親の遺産は、仲の良し悪しに関係なく、法律に基づいて公平に分けられるべきものです。
しかし、実際には「一部の相続人が遺産を独り占めしようとしている」「通帳や財産の内容を見せてくれない」といったトラブルが少なくありません。
「なんだかおかしいな」と思ったとき、我慢する必要はありません。
この記事では、同じような状況で悩んでいた方の相談をもとに、遺産の調査から調停による解決までの流れを、わかりやすくご紹介しています。
あなたの権利を守るために、ぜひご一読ください。
相続問題の解決事例|同居していた姉が遺産を開示しない…遺産を隠されたときの対処法
母が亡くなった後、相続人である相談者様は、ご自身の相続分を受け取りたいと思い、遺産について姉に確認しようとしました。
しかし、母と同居していた姉は、
「お金のことは私が全部知っているから」
「もう手続きを進めてるから」
と話をはぐらかし、遺産の内訳や通帳、保険のことを教えてくれません。
「もしかして勝手に引き出して使っているのでは…?」
「このまま自分の分は無かったことにされてしまうのでは…?」
そんな強い不安を抱えながら、当事務所にご相談いただきました。
当事務所の対応
このように、特定の相続人が遺産を独占しようとしているケースは、実際に多く見受けられます。
特に同居していた親族は、遺産の管理がしやすいため、他の相続人に情報を開示せずに進めてしまうこともあります。
1.相続財産の調査
まずは、遺産が何か・どれだけあるかを把握するため、依頼者様の代理人として、金融機関・保険会社・不動産など複数の機関に照会を行いました。
- 預貯金(口座履歴の確認):相続開始日(亡くなった日)の残高だけでなく、亡くなる前の出入金記録を確認し、不自然な出入りがないかをチェックすることが重要です。
- 生命保険の契約状況:死亡保険金は原則として「受取人固有の財産」とされ遺産分割の対象にはなりませんが、生前に不当に契約が解約され、解約返戻金が引き出されているケースなど、使い込みの温床になることがあります。保険証券が見つからなくても、「生命保険契約照会制度」を利用して、網羅的に保険契約の有無を調査することが可能です。
- 不動産の登記情報:死亡前に第三者に売却されたり、名義変更されているケースもあります。
- 有価証券、その他資産:弁護士会を通じた照会手続きを経ないと回答が得られない可能性もあります。
姉が情報を出さなくても、法定相続人には「遺産内容の確認をする権利」があります。
そのため、金融機関等の窓口で所定の手続きをとることで、預貯金等の内容を確認することは可能です。
もっとも、法定相続人であることを証明する資料を準備したり、不慣れだと難しい部分も少なくありませんので、専門家である弁護士に依頼することも有用です。
2.遺産分割調停の申立て
調査の結果、使途不明な出金が明らかになったため、姉に説明を求めましたが、姉との話し合いが進まなかったため、家庭裁判所へ「遺産分割調停」を申立てました。
調停では、第三者の調停委員が介入し、相続人同士の話し合いを冷静に進めることができます。
3.法定相続分に基づいた分割で解決
調査した財産内容を基に、使途不明金を相続財産に持ち戻したうえで、民法上の法定相続分での分割を提案。
相手方にも納得いただけるよう粘り強く交渉し、無事に調停が成立しました。
親の遺産を教えてくれない…このようなケースでの注意点
- 同居=すべて知っている は要注意
情報を独占された場合は、早期に専門家へご相談を。 - 財産の所在は調査で明らかにできる
法的手続きで金融機関・保険会社への照会が可能です。 - 調停手続きで冷静かつ法的に解決できる
感情的な対立を避け、第三者が入ることで安心して協議できます。
相談の流れ
- 【無料相談】状況のヒアリング
- 【調査開始】財産の内容調査・照会手続き
- 【調停申立て】家庭裁判所への申立て
- 【調停交渉】法定相続分をもとに協議
- 【解決】調停成立 → 分配・名義変更手続き
「知らないまま泣き寝入り」は避けましょう
遺産を勝手に扱われたり、相続分をなかったことにされそうな場合でも、
法的手段と証拠によって、正当な権利を取り戻すことができます。
家族間の問題で悩んでいても、一人で抱え込む必要はありません。
相続問題に強い弁護士が、あなたの味方になります。

2004年の弁護士登録以降、個人・法人問わず幅広い事件を担当し、クライアントにとっての重大事には誠実かつ丁寧に寄り添う。命運に配慮し、最善策を模索。豊富な実績と十分なコミュニケーションで、敷居の高さを感じさせない弁護士像を追求してきた。1978年大阪府出身、京都大学法学部卒業。2011年に独立。不動産・労務・商事・民事・破産・家事など多様な分野を扱い、2024年6月に蒼生法律事務所へ合流。相続・遺言