【弁護士が解説】「知らなかった」では済まされない~お盆明けに相続争いが起きやすい3つの理由


皆さん、こんにちは。 蒼生(そうせい)法律事務所、代表弁護士の平野潤です。
うだるような暑さが続きますが、お盆休みは故郷でご家族やご親戚とゆっくり過ごされる方も多いのではないでしょうか。故人を偲び、思い出話に花を咲かせる。お盆は、そんなかけがえのない時間ですよね。
しかし、弁護士という仕事柄、この時期になると毎年決まってご相談が増える問題があります。それが「遺産相続」です。
普段は離れて暮らす親族が一堂に会するお盆は、相続について話し合う良い機会です。しかし、この話し合いがきっかけとなり、これまで仲の良かった家族の関係がぎくしゃくし、深刻な対立、いわゆる「争族」に発展してしまうケースが後を絶ちません。
なぜ、お盆明けに相続争いは起きやすいのでしょうか? そこには、「知らなかった」では済まされない、いくつかの明確な理由と落とし穴が存在します。今回は、皆さんが相続で失敗しないために、その3つの理由と対策を、初心者の方にも分かりやすく解説していきたいと思います。

理由1:それぞれの「貢献度」や「受益」(利益)に対する認識のズレが一気に表面化するから


普段は顔を合わせない兄弟姉妹も、お盆には実家に集まります。そこで相続の話が持ち上がると、まず最初にぶつかるのが、この「認識のズレ」です。

「私が一番、親の面倒を見た」―寄与分の主張

例えば、長年ご両親と同居し、身の回りのお世話や介護を一身に引き受けてきた長女がいたとします。彼女は「私がこれだけ尽くしてきたのだから、他の兄弟よりも財産を多くもらうのが当然だ」と考えるでしょう。
これが法律でいう「寄与分(きよぶん)」の主張につながります。

しかし、他の兄弟からは「親子なんだから当たり前じゃないか」「たまに実家に帰っていたけど、そこまで大変そうには見えなかった」といった反論が出てくるかもしれません。
実は、この寄与分、法的に認められるためのハードルは意外と高いのです。単に「身の回りの世話をしていた」というだけでは足りず、「特別な貢献によって、親の財産が減るのを防いだ、あるいは増やすことに貢献した」というレベルの証明が必要になります。感情論だけでは、なかなか他の相続人を納得させることはできません。

「兄さんだけ援助してもらってズルい」―特別受益の主張

一方で、こんなケースもあります。 次男が「そういえば兄さんは、大学の学費だけじゃなく、家を建てるときにも両親から多額の援助を受けていたじゃないか。それは生前の財産の前渡し(生前贈与)なんだから、その分、兄さんのもらう遺産は少なくなるべきだ!」と主張する。
これが「特別受益(とくべつじゅえき)」の問題です。
言われたお兄さんからすれば、「そんな昔のことを持ち出すのか」「お前だって車を買ってもらったじゃないか」と、記憶も曖昧な過去の話で水掛け論になりがちです。
このように、お盆の話し合いは、これまで胸の内にしまっていた「俺はこれだけ貢献した」「あなたはこれだけ得をした」という不満や不公平感が噴出し、収拾のつかない感情的な対立に発展してしまう、非常に危険なタイミングなのです。

理由2:分けにくい「不動産」の扱いで揉めるから


相続財産の中でも、特に争いの火種となりやすいのが「不動産」です。ご実家の土地や建物などが遺産の大部分を占める、というケースは非常に多いですよね。預貯金のように1円単位で割り切れない不動産は、その分け方と評価額で必ずと言っていいほど意見が対立します。

「住み続けたい」vs「売ってお金で分けたい」

例えば、相続人が長男と長女の2人だったとします。 長男は「親との思い出が詰まったこの実家に、自分が家族と住み続けたい」と考えています。一方、長女は「私はもう実家に戻るつもりはないから、家を売って、そのお金をきっちり半分に分けてほしい」と考えています。
どちらの言い分にも一理ありますが、両者の希望を同時に叶えることはできません。長男が実家を相続するためには、長女に対して彼女の相続分に見合う現金(代償金)を支払う必要がありますが、そのお金を用意できなければ、話は行き詰まってしまいます。

不動産の「評価額」で利害が対立

さらに問題を複雑にするのが、不動産の「値段=評価額」の問題です。 不動産の価格には、

  • 固定資産税評価額(固定資産税の計算に使う価格)
  • 相続税路線価(相続税の計算に使う価格)
  • 公示地価・実勢価格(実際に市場で取引される価格)

など、いくつかの基準があります。そして、どの基準を使うかによって、評価額は大きく変わってきます。

先ほどの例で言えば、実家を相続したい長男は「評価額はできるだけ安い方が、長女に払う代償金が少なくて済む」と考えます。逆に、代償金をもらう長女は「評価額はできるだけ高い方が、もらえる現金が増える」と考えます。
このように、お互いの利害が真っ向から対立するため、素人同士の話し合いで不動産の評価額を決めるのは至難の業です。

不動産の客観的な価格を知るには?

国土交通省が公表している地価公示や、実際の取引価格情報などが参考になります。しかし、個別の土地の正確な価値を把握するには、やはり専門家の力が必要です。
こうした不動産の問題は、感情論だけでは決して解決できません。客観的な視点を持つ専門家を交えなければ、協議が前に進まなくなってしまうのです。

理由3:「知らなかった」では済まされない法的な期限(タイムリミット)があるから


お盆の話し合いで、初めて「親に多額の借金があった」「実は遺言書が残されていた」といった衝撃の事実が発覚することも少なくありません。ここで注意しなければならないのが、相続手続きには厳格なタイムリミットが設けられている、ということです。

恐怖のタイムリミット①:相続放棄(3ヶ月)

亡くなった方のプラスの財産よりマイナスの財産(借金など)の方が多い場合は、「相続放棄」という手続きを検討します。これは、財産も借金も一切引き継がないという意思表示ですが、これには重大な落とし穴があります。
相続放棄の手続(申述)は、民法により、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内にしなければならないと定められています。

出典:相続の放棄の申述(裁判所)

そう、原則として3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きをしなければならないのです。お盆の時期には、すでにこの期限が過ぎてしまっている、あるいは目前に迫っている可能性があります。「兄弟で話し合って、自分は財産をもらわないことにしたから大丈夫」と安心していると、ある日突然、債権者から督促状が届き、親の借金をすべて背負うことになりかねません。

恐怖のタイムリミット②:遺留分(1年)

「全財産を長男に相続させる」といった内容の遺言書が見つかることもあります。しかし、その場合でも、他の相続人(配偶者や他の子など)には、法律で最低限保障された財産の取り分である「遺留分(いりゅうぶん)」を請求する権利があります。
この遺留分を請求する権利にも時効があり、「相続の開始と、遺留分を侵害する遺贈などがあったことを知った時から1年間」に行使しないと、権利が消滅してしまいます。遺言の内容に納得がいかないまま時間だけが過ぎてしまい、気づいた時には権利を主張できなくなっていた、というケースは非常に多いのです。

「争族」を避けるために、弁護士に相談するという選択


ここまでお読みいただいて、お分かりいただけたかと思います。

  • 寄与分や特別受益といった、感情が絡むお金の対立
  • 不動産という、専門知識が必要な財産の分割
  • 相続放棄や遺留分といった、厳格な法廷の期限

これら複雑な問題を、法律の知識がないご親族だけで解決するのは、極めて困難です。むしろ、無理に当事者だけで進めようとすることが、問題をこじらせ、「争族」を引き起こす最大の原因と言えるでしょう。

そこで、私たちがご提案したいのが、「弁護士に相談する」という選択肢です。 弁護士に依頼すると、以下のようなメリットがあります。

  • あなたの代理人として冷静に交渉します:弁護士が交渉の窓口となることで、親族と直接やり取りする精神的なストレスから解放されます。
  • あなたの正当な権利を法的に主張します:寄与分や特別受益について、感情論ではなく、法的な根拠に基づいて論理的に主張・立証します。
  • ワンストップで問題を解決します:不動産の評価が必要なら不動産鑑定士、税金の申告が必要なら税理士といった専門家と連携し、あらゆる問題にワンストップで対応します。
  • 面倒な手続きをすべて代行します:相続人の調査(戸籍収集)、財産調査、遺産分割協議書の作成といった煩雑な手続きを、すべてお任せいただけます。
  • 円満な解決を目指します:法律の専門家として、公平な解決案や法的な落としどころを探り、ご家族の関係修復も視野に入れた円満な解決を目指します。

お盆の話し合いで、少しでも「話がこじれそうだな」「自分たちの手に負えないな」と感じたら、それは専門家に助けを求めるサインです。問題が深刻化し、大切な家族の絆が取り返しのつかないことになる前に、ぜひ一度、私たち専門家にご相談ください。

蒼生法律事務所では、相続に関するあらゆるお悩みに対応しております。初回のご相談は無料です。どんな些細なことでも構いません。
まずは気軽にお問い合わせください。 あなたが前に進むための一歩を、私たちが全力でサポートいたします。