ポイント解説「寄与分」2~寄与分が認められるための要件~


皆さん、こんにちは!蒼生法律事務所の代表弁護士、平野潤です。

前回は、遺産分割の公平を図るための制度である寄与分の基本的な考え方「特別の寄与」と、主に5つの類型があることをお話ししました。

「私はまさにあの療養看護型だ!」「会社経営の手伝いは家事従事型に当たるはず!」

そう思われた方も多いのではないでしょうか。

しかし、寄与分は「特別」の貢献でなければ認められません。
ご自身の貢献が法的に「特別の寄与」と認められ、相続財産の分け前を増やせるかどうかは、裁判所が示す判断基準をクリアできるかにかかっています。

今回は、寄与分が認められるために絶対に知っておきたい要件、具体的な判断基準、そして裁判例(実際に裁判所が下した判決・審判の例)を通じて、寄与分の「判断の分かれ目」を徹底解説します。

遺産分割調停や審判であなたの貢献を正当に評価してもらうために、ぜひ最後までお読みください。


寄与分が認められるための大原則となる4つの要件


あなたの貢献が「特別の寄与」と認められるには、法的に次の4つの要件をすべて満たさなければなりません。

要件 内容
1. 相続人であること 寄与分を主張できるのは、被相続人(亡くなった方)の相続人に限られます。
2. 特別な貢献であること 通常期待される義務の範囲を超えることが必要です。
3. 財産的な効果があること 被相続人の財産の維持または増加に寄与したことが必要です。
4. 因果関係があること 貢献行為と財産の維持・増加との間に原因と結果の関係が必要です。

1. 相続人であること

寄与分を主張できるのは、被相続人(亡くなった方)の相続人に限られます。
例えば、故人の子の配偶者(義理の子)など、相続人ではない人がどんなに献身的に介護しても、原則として寄与分は主張できません(
※例外として、相続人の配偶者の行為を、履行補助者によるものとして、相続人本人の貢献と認めたケースがあります)。

ただし、2019年の民法改正により、相続人ではない親族が療養看護などで貢献した場合に金銭を請求できる「特別寄与料」の制度が新設されました。
あなたの貢献が特別寄与料に該当するかどうかも、弁護士に確認しましょう。

2. 特別な貢献であること(=通常期待される義務の範囲を超えること)

最も重要で、判断の分かれ目となる要件です。

親族間の扶養義務や、夫婦間の協力義務など、通常期待される義務の範囲内とみなされる行為では、寄与分は認められません。

療養看護型であれば、その介護が長期間・献身的であるか、介護の内容が肉体的・精神的に過酷であったかなどが重要な視点となります。

家事従事型であれば、その労働に対する報酬がなかった、あるいは著しく低かったことが必要です。

3. 被相続人の財産の維持または増加に寄与したこと(財産的な効果)

貢献の結果、遺産が増えたか、または減らずに済んだという財産的な効果が認められなければなりません。

例えば、療養看護型の場合、「介護を頑張った結果、本来支出されるべきであった高額な介護費用や施設費用の出費を免れた」という形で、遺産が維持されたと認められます。

4. 貢献行為と財産の維持・増加との間に因果関係があること

あなたの貢献がなければ、遺産は増えなかった、あるいは減っていた、という原因と結果の関係(因果関係)が必要です。


類型別の判断基準と裁判例に見る「判断の分かれ目」


では、前回の5つの類型について、裁判所がどのような点に着目して寄与分を認めているのかを見ていきましょう。

1. 療養看護型:期間と程度が「特別」か?

療養看護型で寄与分が認められるかの判断基準は、介護の期間、献身性、そして他の親族からの援助の有無です。

注目すべきポイント 具体的な基準
期間と程度 概ね数年以上の長期にわたり、被相続人の要介護度が高く、介護内容が過酷だったか。
自己犠牲 介護のために、自分の仕事や家庭生活を犠牲にしたか。
費用の節約 プロのヘルパーや介護施設を利用した場合と比較して、どの程度の費用が節約できたか。

認められた事例: 相続人(の妻が履行補助者として)半身不随の親と同居し、13年間にわたり献身的に介護したケース(裁判例:平成22年9月13日東京高等裁判所決定)。
「同居の親族の扶養義務の範囲を超え,相続財産の維持に貢献した側面がある」と評価されました。

認められなかった事例:被相続人が軽い認知症で、同居の相続人が扶養義務の範囲内の介護を行ったとみなされたケース。

重要な落とし穴:親子間・夫婦間には法律上の扶養義務があるため、単に病気やケガの世話をしただけでは特別の寄与とは認められにくいのが現実です。

2. 家事従事型:無報酬・低賃金だったか?事業・利益にどれだけ影響を与えたか?

会社経営者や不動産オーナーの相続で問題になりやすいのが家事従事型です。

認められた事例: :子(相続人)が、家業の薬局経営を手伝い、途中から経営の中心となって、法人化や規模拡大などに貢献したケース(裁判例:平成4年9月28日福岡家庭裁判所久留米支部審判)。
無償労働ではなかったものの、「遺産の維持又は増加に特別の寄与貢献を相当程度した」と評価されました。

認められなかった事例:事業の手伝いはしていたが、それに見合った給与を受け取っていた、あるいはその労働が事業の規模や利益に実質的な影響を与えていないと判断されたケース。

3. その他の類型

財産給付型・扶養型: 金銭的な貢献は比較的分かりやすいですが、通常期待される義務の範囲内とみなされないために、生計維持のために長期間継続的に行われたかなどが問われます。

財産管理型:単なる不動産の管理や会社経営の補助ではなく、その管理によって財産の散逸を防いだ、価値を高めたという具体的な成果が必要です。


よくある失敗と弁護士に依頼するメリット

失敗|「寄与分」を感情論で主張してしまう:
遺産分割調停の場で、「私はこれだけ頑張ったんだから!」と感情的に訴えるだけでは、寄与分は認められません。
裁判所が求めているのは、上記の4つの要件と、それを裏付ける客観的な証拠です。

注意点:口約束や領収書のない金銭のやり取りは、証拠として弱く、寄与分の主張が認められないリスクを高めます。

寄与分獲得には「証拠と立証のプロ」が必要

弁護士に遺産相続を依頼する最大のメリットは、あなたの貢献を法的な視点から精査し、寄与分を勝ち取るための戦略的な立証ができる点です。

サポート内容
1. 証拠収集:介護記録、銀行の取引履歴、不動産の賃貸契約書、会社の会計帳簿など、寄与分の立証に必要なあらゆる相続財産調査を代行します。
2. 金銭評価:貢献の金銭的な価値を、裁判例に基づいた専門的な計算方法で正確に算定します。
3. 交渉・調停:感情的な対立になりがちな遺産分割の場で、弁護士が冷静に、かつ説得力をもって寄与分の主張を行います。

資産家、医師、会社経営者、不動産オーナーといった大きな相続財産を持つ方の相続問題では、寄与分の額も大きくなるため、尚更、弁護士による専門的なサポートは必須です。

引用・出典: 民法(法令検索)、e-Gov法令検索、https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

まずはあなたのケースについて気軽にお問い合わせください


今回は、寄与分が認められるための要件と、裁判例から見た判断基準について解説しました。

「私のケースは、この裁判例のように寄与分が認められるだろうか?」

「遺産分割調停で、他の相続人が寄与分を主張してきたが、どう対応すべきか?」

遺産相続で寄与分をめぐるトラブルにお悩みなら、相続人調査、相続財産調査から遺留分、相続税対策まで、相続手続を全てお任せいただける蒼生法律事務所にご相談ください。
当事務所が、あなたの貢献を正当に評価し、遺産分割を有利に進めるお手伝いをさせていただきます。

次回は、いよいよシリーズ最終回!「寄与分の計算方法」について、具体的な算定例を交えながら解説します。どうぞご期待ください!

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