相続不動産の処理


相続財産の中に不動産がある場合、遺言書によって相続する者が指定されているような場合でなければ、相続人間の共有となります。
不動産は、金銭と異なり、物理的に分けることは困難です。
等しい面積で分けようとしても、形状や接道、日当たりなどが異なり、意見が分かれることが少なくありません。
また、不動産を取得する相続人が決まったとしても、価値の評価方法について、相続人間の意見が分かれることもあります。

それでは、相続人間の共有状態のまま、いつまでも置いておいた方がいいのでしょうか。
不動産を所有していれば、建物の維持修繕や庭木の手入れなどの費用負担が生じますし、固定資産税・都市計画税も支払わなければいけません。
また、売却や賃貸をしようとしても、共有者間の意見が一致しないと、なかなか決められません。さらに、時間が経過して共有者が亡くなると、更なる相続が発生し相続人が増えて、権利関係がより複雑になります。
そのため、いつまでも共有状態のまま放置することはお勧めできません。
では、どうすればいいでしょうか。以下、共有不動産の分割方法や手続について説明いたします。

共有不動産の分割方法

①現物分割

共有不動産を物理的に分割して、それぞれの持ち分に応じて取得する方法です。
農地や山林など広大な土地について区画を分けて取得するような場合には有効な方法となり得ますが、位置や形状により価値が均等にならないような場合や分割が困難な建物の場合には難しいでしょう。

②換価分割


共有不動産を売却し、その売却代金をそれぞれの持ち分に応じて分配する方法です。
不動産を売却して現金化するため、均等に分けることができますが、売却に反対する相続人がいる場合や売買価格について意見が分かれるような場合には難しいでしょう。

③代償分割

共有者の一人または一部が、他の共有者の持ち分を金銭(代償金)で買い取る方法です。
相続不動産を売却することなく、使用したい相続人が取得することができますが、大証金を準備する必要があり、また、価値の評価方法について意見が分かれることがあります。

共有不動産の分割の手続

①相続人間で協議する

まずは相続人間で分割方法について話し合うことになります。
取得者や価値評価などについて合意することができれば、その内容を遺産分割協議書などにまとめます。

②裁判手続(共有物分割請求)をとる


相続人間の協議がまとまらなければ、裁判手続を検討することになります。
以前は相続開始から長期間が経過していようと、遺産分割協議をしない限りは、原則として共有物分割請求はできませんでした。
ところが、令和3年の民法改正(令和5年4月1日施行)により、相続開始から10年を経過しても遺産分割協議がまとまらないような場合には、共有物分割請求を申立てることができるようになりました。
(但し、共有者である相続人は、共有物分割訴訟について異議を述べることができますので、異議の申し出があった場合には、遺産分割協議を行う必要があります。)

共有物分割請求野手続としては、先ずは家庭裁判所へ調停を申立てることになります。
調停では、裁判所が選任する調停委員が間に入って、話し合いによる解決を目指します。
調停で合意できれば無事解決となりますが、合意できなければ調停不成立(不調)となります。

調停が不成立となった場合には、地方裁判所に共有物分割訴訟を申立てることになります。
共有物分割訴訟では、裁判所は、現物分割・代償分割・換価分割の順に検討し、事案にあった方法を選択することになります。

このように、相続不動産について、10年を経過しても遺産分割協議がまとまらないような場合には、共有物分割請求手続をとることが可能となりましたので、相続不動産の処理にお困りの場合には、是非蒼生法律事務所にご相談ください。

所在等不明共有者の持ち分の取得


数回の相続が生じてすべての相続人の所在を把握できない場合や相続人の一部が海外に移住して連絡が取れない場合など、遺産分割協議ができないまま、長期間が経過してしまうこともあります。
このような事態に対応するべく、令和3年の民法改正(令和5年4月1日施行)により、相続開始から10年が経過した場合には、所在等不明の相続人の不動産の持分を取得し、または売却することができるようになりました。

一部の相続人の所在が分からないまま、長年遺産分割協議ができずに、共有不動産の処理にお困りの場合には、是非蒼生法律事務所にご相談ください。

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